営業マンに丸投げ
- 5月12日
- 読了時間: 7分
おはようございます。FukushiVisionGroup株式会社の塚本です。
【お知らせ】
本日、地域連携マーケティングtv.のYouTubeチャンネルを更新いたします。第一弾は「売るから繋ぐ」、そして第二弾は「入居相談員の使命」です。
ちょうど先日、ある会社の入居相談員の方から相談をいただき、今回の撮影に至りました。
たった8分ほどの動画であり、カンペをガン見しているのが、大変お見苦しいのですが、内容はすべて私の考えとなっておりますため、お時間あるときにご覧いただけたら嬉しいです。
さて、本日のテーマは「やってはいけない地域連携」から「営業マンに丸投げ」について解説したいと思います。
これは、業務の丸投げを悪いということではなく、責任の持ち方についての考えを示しています。
様々な会社が地域連携担当者を、その名を変えて営業マンとして配置されていますが、優秀だと言われていた異業種の営業マンが、活躍するとは限らないのです。
そういった意味で、「丸投げ」という言葉について、どのよう考えるか読み進めていただければ幸いです。
専門職の意識は営業活動にない
組織が地域連携活動を円滑に進めていくために、専門職だけがそのすべてを担う必要はないと考えています。
障害者グループホームの責任者であれ、病院の地域連携担当者であれ、訪問看護ステーションの看護師であれ、彼らが組織から与えられている本来の任務の大半は、支援者として利用者や患者を支えることにあるからです。
実際、彼ら自身もそのことを十分に理解しており、「自分たちは営業活動を担うために入職したわけではない」と口にします。
そもそも、地域連携は単なる営業活動ではありません。
しかし、仕事を与える組織や上司の考え方が、「とにかく一件でも案件を取ってこい」「一部屋でも多く埋めろ」といった数字至上の発想に傾いてしまうと、地域連携の本質から大きく逸脱してしまうのです。
こうした認識のギャップが大きいほど、特に新規事業の立ち上げ期においては、外回りの頻度が過度に増えていきます。
地域連携の意義をどのように伝えるか
実際、安定して利用者支援ができるようになるのは、立ち上げから2か月以降となるケースが多く、それまでの期間は、専門職にとって「我慢との戦い」となります。
だからこそ、いかに専門職のモチベーションを維持できるか、また地域連携活動の意義をどれだけ正しく理解させられるかは、組織の指導と教育にかかっていると言っても過言ではありません。
この地域連携の意義を正しく伝えるためには、相当に高度な「伝え方」が求められます。
私が見てきた多くの組織では、経営者を含めて説明があまりにも下手で、結果として専門職に外回りを強制してしまっています。
その結果、専門職は意味を理解できないまま業務を課され、仕事に価値を見いだせず、離職へと至るケースが後を絶ちません。
専門職の役割と地域連携の役割を区別する
こうした事態を防ぐためには、専門職の役割と地域連携の役割を明確に区別し、円滑な運営を目指す仕組みを構築することが、非常に有効な手段となります。
その一つが、営業マンを採用するという選択です。
内部の人材だけでは地域連携を十分に推進できない場合、一定の営業経験を持つ人材を採用し、専任として従事してもらうことで、組織の体制は一気に整理されます。
私たちが支援を行う際にも、組織マネジメントの基本概念である「役割理論」を提唱しています。
組織構造を見直すタイミングで、この地域連携担当者を配置する仕組みを導入するケースは少なくありません。
ここまでは、いわば賛成意見です。
優秀な営業マンという誤解
しかし、ここからは異なる視点となります。
そうは言っても、「元営業マン」にすべてを託すことは、私はおすすめしていません。
その理由の一つが、「営業経験者=優秀である」という大きな誤解です。
本当に優秀で、自分自身の力で稼げる営業人材であれば、報酬に天井がある医療・介護・福祉業界を選ぶことは少なく、むしろ成果報酬型の世界で、すでに高収入を得ているはずです。
優秀かどうかを分けるのは、肩書や経歴ではなく、その人自身の考え方と行動です。
厳しい見方をすれば、前職で「優秀だ」と評価されていた営業マンは、会社のブランド力や、商品・サービスそのものに「売れる力」が備わっている環境に支えられていただけ、というケースも少なくありません。
本当に優秀な営業人材とは、無名のブランドや、立ち上げたばかりで商品力やブランド力が乏しい状態であっても「売れる力」を発揮できる人材です。
さらに言えば、商品やサービスそのものを生み出す力、価値を構築する力を持っている人材こそが、本質的に優秀だと言えるのです。
営業マンに丸投げするリスク
私自身、過去に7社の転職を経験していますが、「木下の介護」で入居相談員をしていた頃は、成績面では優秀だと言われていました。
しかし、今振り返れば、その成果の8割は、会社のブランド力、有料老人ホームという“箱”、そしてそれを支える施設長や職員の力によるものだったと感じています。
つまり、「優秀そうだ」と思って採用した人材が、実は会社や商品に“ヤドカリ”のように依存して生きてきた人材である可能性も否定できないのです。
そのような人材に、地域連携という極めて重要な業務を丸投げすることには、明確なリスクが伴います。
医療・介護・福祉業界における地域連携担当者とは、「地域理解」「人間関係の構築力」、そして「課題解決を前に進める熱意」を備えたうえで、この業界そのものに対する「愛情」を持っている人材でなければなりません。
訪問マッサージ事業の同意書対策
私は以前、訪問マッサージ事業所の地域連携担当者と話をした際、非常に残念な思いをした経験があります。
訪問マッサージは、医療保険制度上のサービスであるにもかかわらず、第1章で触れた「地域包括ケアシステム」の枠内に十分に位置づけられておらず、医師が同意書の作成を拒否するケースが多発していたのです。
この事業所でも、ケアマネジャーや施設を通じて利用者にサービスを勧め、本人が施術を希望したにもかかわらず、主治医の同意が得られず断念するという事例が頻発していました。
そこで地域連携会議を開催し、問題解決に向けた検討を行うことになりました。
私の提案は、医学的根拠や歴史的背景を十分に理解していない医師が主治医だった場合に備えたものでした。
別の医師との連携ネットワークを構築すること、また同意を拒否する医師とも時間をかけて対話の機会を設ける努力を続けることです。
営業マンの働く動機はここにはない
しかし、その担当者から返ってきた言葉は、「そこまでする必要はない。受けられない利用者がいれば断るしかない。自分の役割は訪問して案件を取ってくることだ」という、あまりにも冷たいものでした。
この瞬間、私は愕然としました。
この担当者は、地域連携の本質を理解せず、単なる“訪問機械”として件数を稼ぐことだけをミッションとし、利用者の人生や課題については、1ミリも考えていなかったのです。
採用時には「経験者だから優秀だ」と評価されていましたが、果たして何をもって優秀と判断していたのか、疑問を抱かざるを得ませんでした。
そもそも、この業界における地域連携は、「モノを売る営業」とは本質的に異なります。
一般企業で見られるような、いわゆる「ゴリ押し型の営業スタイル」は、この業界ではむしろ敬遠されます。
私たちが提供しているのは、利用者の人生そのものに深く関わるサービスです。
そのプロセスにおいて最も重要なのは、「信頼」と「共感」です。どれだけ誠実であるか、どれだけ相手の立場に立てるかが、成果を大きく左右します。
したがって、他業界で営業成績がトップだったとしても、その成功体験をそのまま持ち込んでも、この業界では通用しません。
むしろ、その「売り込みの強さ」や「成果至上主義的な姿勢」が、連携先からの不信感や警戒心を生むリスクすらあります。
この業界で本当に求められる営業とは、「売る力」ではなく、「つなぐ力」「支える力」です。
つまり、数字を追う力ではなく、人と人との関係性を丁寧に育む力こそが、地域連携の本質なのです。
公式YouTubeチャンネル
FukushiVisionGroup株式会社
医療・介護・福祉経営コンサルティング
代表取締役 塚本洋介
(社会福祉士/福祉マネジメント修士)

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