おはようございます。
医療・介護・福祉経営コンサルティングFukushi Vision Group株式会社の塚本でございます。
本日はFukushi Vision Groupの姉妹組織である「一般社団法人医療・介護・福祉人材マネジメント総研」が担当した『障害者グループホームの研修成果と歩み』について、社員研修を1年半継続してきた障害者グループホームの変化・成果・結果を分析し、お伝えしていきます。
昨今では「障害者グループホーム」の質について問われ、大規模施設であった障害者グループホーム恵では、食費を過大徴収し、さらには報酬を不正に請求していた件で、指定取り消しとなり、さらには譲渡する運びとなりました。
また就労継続支援A型事業所では、労働契約している利用者に対する支払いを、報酬で横流しすることが横行し、生産活動が停滞している事業所が報酬改定のために利用者を総じて5000人以上解雇となる事態が起こりました。
果たして、今の障害福祉サービスの「質」はどうなっているのか。
今回、そういった不正をし続ける障害福祉サービスがある中で、限られた予算をサービスの質を向上させるために研修に投資した「障害者グループホームB」のこれまでの”歩み”について取組と成果を報告したいと思います。
【目 次】
Vol.1 あらすじ
障害者グループホームB社における「人材教育・育成研修」は、社長の熱い想いから始まりました。
元々、福祉業界未経験から始めた障害者グループホームBの社長は、福祉×ITの融合を目指し、福祉の低賃金化を解消し、福祉で働く人たちがより幸せになれるように一念発起して障害者グループホームを始めたのです。
私たちは、この障害者グループホームBの初期の頃から経営支援をさせていただき、人材教育・人材育成に関しては後半から、ご要望をいただき携わっています。
最初の頃は、FukushiVisionGroup株式会社の経営支援として、「採用支援」を開始し、世話人やサービス管理責任者などの専門職人材の採用を行いました。
当時はまだ、無料媒体であるインディードやエンゲージを活用することで”0円”で採用できるすばらしい時代でしたから、有料媒体であるジョブメドレーと併用しながら採用支援を行っていました。
私たちが採用支援をしていたのは、当然、人材が不足していたからなのですが、新規オープン時は特に”人の入れ代わり”が激しく、人材が定着しないことが問題で、
障害者グループホームBにおいては社長が自らシフトに入るなど、時間と身を削りながら経営も行うなど、非常に過酷な状況だったことで、「コンサルの手を借りる」といった実働支援を行っていたのです。
今でこそ、障害者グループホームが5棟、さらには就労継続支援事業所の運営も開始し、経営基盤としては非常に安定するようになりましたが、
当時の社長の働きを見ると、私たちももっと努力せねばと思い知らされるほどに、熱い姿勢を感じていました。
採用支援を実働しながら、ノウハウを職員に引継ぎ、施設内で実践してもらえるような仕組みを作ったあと、
次に課題となったのは『入居促進』です。
グループホームの定員が5棟で20人で、稼働率が7割程度の場合、収益に大きなダメージを与えてしまいます。
かつて、私は大手介護付き有料老人ホームの入居相談員をしていましたが、定員60人や100人の施設でも、稼働率が8割になれば組織的にピンチであるという位置づけでしたので、
入居母数が少ない障害者グループホームで稼働率が7割というのは非常に危ない状況です。
そのため、社長と相談をしながら営業活動強化するため、営業担当を既存の職員から配置し、地域連携に力を入れました。
これまで行っていなかった精神科病院や基幹相談支援センターとの連携を強化したことで、運よく満床になりました。
基本的に、障害者グループホームというのは高齢者施設と異なり、平均入居継続数は高いはずですが、意外と私のお客様に関しては、転居する方が多く稼働率が低い傾向にあります。
今もまだご支援を継続しているところですが、今回、障害者グループホームBの社長が人材育成・教育に力を入れたいと考えた理由は、様々な経営の取り組みも”働く人次第”ということを理解されたことからだと言います。
以前、食事をしたときに利用者からのクレーム、職員同士の人間関係の悪化、離職の増加が課題で「自分たちだけでは力不足である」と話してくれました。
いくら採用や営業強化を行っても、職員の専門職としての考え方、技術が追い付かなければ障害者グループホームの質は下がり続けてしまい、組織としても存続できないと考えたそうです。
そこでFukushiVisionGroupで2023年6月に設立した一般社団法人医療・介護・福祉人材マネジメント総研で『人材教育・育成』を目的とした社内研修を担当させていただくことになりました。
Vol.2 研修の内容
障害者グループホームの研修内容は、主に2つの軸から構成しました。
ひとつは『社会・組織人』としての研修です。
これは、障害者グループホームで働くひとの中で、医療・介護・福祉業界で実際に支援の計経験がある方に対して、営利企業における重要な「考え方」やコミュニケーション、人間関係、マネジメントなど概念的な研修をロープレやゲーム、グループワークを通じて1年間行いました。
もう一つは『専門職』としての”職人”を育てる研修です。
これは、現在も継続中ですが障害者グループホームBに入社している方のほとんどが、業界未経験ということもあり、2年目から世話人や生活支援として利用者支援を行う『専門職』としての意識×技術を育む研修を行いました。
おそらく障害者グループホームだけではなく、介護施設、病院、訪問看護、クリニックなども含めて、企業としての側面と支援者としての側面の2つが重なることが、働く人の意識や認識を混乱させており、
経営者は経営だけを考え、現場で支援する方は己と利用者や患者の支援しか考えなくなっています。
これらの2つを”あえて”区別して考えることで、日々働く中で両側面の人格を持つことが当たり前であることを習慣づけることが狙いです。
時には経営側に立って、時には支援者側に立って、
どちらの立場で物事を考え判断するか、非常に難しい考え方を育むことで「福祉」という業界の発展と成長を目指すことができると考えています。
1)組織の基本知識と考え方
ここでは「組織とは何か?」という基本的な概念を知識として取得することを目的として研修を行いました。
組織とは何か?
果たして皆さんはこの問いに即座に答えられるでしょうか。
もちろん、組織の定義は人により異なるかもしれませんが、私たちFukushiVisionGroupではこのように組織を定義しています。
『目的達成のために役割をもった人材が2人以上集まり、かつ機能している集団』
ポイントはこの4つです。
①目的達成
②役割のある人材
③2人以上の集団
④機能している
ここでは、お金を稼ぐ集団のことだけを言っているのではなく、ボランティアも含む無償の集団も含むとしています。
つまり「組織」という枠組みには有償・無償は関係ないのです。
この4つのポイントをみると、さらにいくつかの重要な要素を引き出すことができます。
1.目的達成
ここで言う達成すべき目的とは、組織の目的です。達成すべきVisionに言い換えることもできます。ということは、組織の目的が明確に言語化されている必要があるわけです。
2.役割のある人材
これは目的達成と強く関連していますが、目的が明確になっていれば、そこから取り組むべきことも明確に算出することができます。すると、自ずと取り組める人材が必要になるわけで、役割が担える人材を採用するということになります。
これは逆に言えば、役割が担えることが前提であり、担えない人材を採用すると負の遺産になってしまうということです。
3.二人以上の集団
組織は一人ではなり得ないというが、ここで表されていることです。
一人ですべての役割を担うのは可能ですが、そこには連携・協力プレイというものが存在しておらず、また他人の存在すらありません。組織は二人以上が鉄則なのです。
4.機能している
役割をもった人材が配置されても、その人材が能力を発揮し目的に向かって活動し続けることができなければ、組織としてのフォーマットは存在しますが、機能しているとは言えません。組織の条件を成り立たせるには「働く人が機能する」ことが重要なのです。
2)コミュニケーション
組織の基本知識の中で最も重要なのが「コミュニケーション」です。
障害者グループホームBでは、コミュニケーション研修を2つに分けて行いました。
その際、研修では事前のアンケートを受講者である従業員の方から取得しています。
『コミュニケーション』という曖昧かつ抽象的で、多くの意味を含む言葉に対して、どのような印象をもっているのか。
また、コミュニケーションが実際の現場でうまくいった例、うまくいかなかった例など書き出してもらいました。
すると、以下のような回答がきました。
Q1:コミュニケーションで困った事例
・相手の返しがおうむ返しで、試しに直前に話したことと真逆の事を言ったらそれも
「そうですよね」と返答され、会話にならないと諦めた。
・こちらの意図が利用者様に上手く伝わっておらず不機嫌になってしまった。
・緊張してしまい上手く話せなかった。
Q2:コミュニケーションで上手くいった事例
・利用者様の性格や傾向をよく考えてこちらが伝えたい事をうまく伝えられた。
・笑顔で接していたら、相手も笑顔で楽しそうにお話をしてくれたこと。話の最後に「わかりやすかった」「楽しかった」と言っていただけたとき。
・会話がはずみ相手が考えてることがおおよそ理解できた。
上記でもわかる通り、コミュニケーションの方法として多く使用されているのは”言語”だと思います。
また言語以外にも表情といった”非言語”もコミュニケーションに貢献していることがわかります。
これを踏まえると、組織が機能するためには、人間同士の関係性を円滑にすることが重要です。私はこれを組織の”潤滑油”と言っています。
よく組織が機能することを「歯車」に例えることがありますが、
組織内のコミュニケーションが悪いと、この歯車がさび付いて動きが鈍いことを表現できます。
さらに、組織論では「適材適所」という言葉が出てきますが、これが不適材不適所だった場合、組織の歯車はそもそも大きさも形も違うことから、かみ合わない事態が起こります。
研修では、自分たちの障害者グループホームという組織歯車の形、大きさがマッチしているか、そしてサビ付いていないか?ということを改めて模索し考える時間を多くとりました。
コミュニケーションという言葉の意味を多く占める言語について、これはシグナルや記号の羅列による意味を成しているものであり、発信方法、受け止め方、解釈の方法など、発信者と受け取り手の相互の存在が不可欠です。
つまり、コミュニケーションというのは生物との間で交わされる言語・非言語の表現やワードの相互交換であり、どちらかが一方通行であった場合、これは成立していないと判断できます。
このようにコミュニケーションという深すぎる研修テーマでしたが、重要性を理解するため多くの時間を割いた研修でした。
3)報連相の重要性
ここではビジネスマン・社会人として”当たり前”だと言われている「報連相の重要性」について研修を行いました。
報連相では、組織の中において「報連相すべきこと」と「報連相しなくてもよいこと」を考えてもらいました。
また報連相のタイミング、効能・効果についてもグループワークを通じて理解を深めました。
皆さんはどうでしょうか?
障害者グループホームだけではなく、報連相は重要なテーマですよね。
これは、前述したコミュニケーションの中でも記載した組織の潤滑油としての役割を果たします。
あらゆる組織に起こるコンフリクト(対立)は、報連相の不足から生じるものも大きいのです。
そこで、まずは報連相のタイミングについて考えていきます。
‐ 報連相のタイミング
報連相というのは報告・連絡・相談の3つのことを差します。
これには、それぞれタイミングがあり間違えてしまうと経営や運営にとって大きな損失を与えてしまう可能性があります。
仕事ができない人の特徴で、私が感じているのは報連相ができない人です。
個人で仕事をするなら問題ありませんが、組織でチームで仕事をするならば、報連相による情報共有は必然と言えるでしょう。
それでは皆さんは、報連相のタイミングについてどれだけ理解をしているでしょうか。
①報告 ⇒ 事後
②連絡 ⇒ 途中
③相談 ⇒ 事前
このように報連相のタイミングを理解することができます。どのような内容でも、仕事に関連し多少なりとも影響を与えることがあれば、プライベートな事情でも報連相すべきだと思います。
この報連相ができる状況をつくるのは、組織の管理者やマネージャーであり、また環境の中には相互の心理的安全性・配慮性を整備する必要があると考えます。
さて、皆さんは組織内において適切な報連相は行っているでしょうか。
ぜひ考えてみたください。
4)伝え方
「伝え方」の研修はコミュニケーション研修をさらに細分化したカテゴリとなります。
コミュニケーションは人の幅広い概念であり、定義が曖昧なため理解するまでに時間がかかってしまいますが”伝え方”に関しては、技術的要素がが強いため、実は明日から実践できる効率的・効果的な研修となっているのです。
以前、一時期有名になった『伝え方が9割』という本を覚えておりますでしょうか。
コピーライターである佐々木圭一さん著書のベストセラー本です。
あまり、記憶にないですが技術面的な話が多かったように思えますが、素晴らしい本だったと記憶しています。
"なぜ人は伝えるのか?”
伝えるという動詞に対して明確にすべきことは「誰に」「何を」「何の目的で」という三拍子が重要だと言います。
今回の研修でも、障害者グループホームで働く上で誰に対して何を伝えているのか?日頃からどのような目的で伝えているのかなど、日々の現場と重なるようなコンテンツにしました。
誰に、何をというのはとても分かりやすい質問ですが
”伝える目的”は何?と聞かれると意外に難しいものです。
『ストレスゼロの伝え方』の著者である木村英一さんは、伝える目的をこのように書いていました。
伝える目的 ⇒ 伝えた相手に思い通りに動いてもらうため
このような言い方をすると機械的、かつコントールや支配下的イメージを持たれてしまうかもしれませんが、確かにな~と思いませんか。
伝えるということは、何かしら相手に行動を促すためのアプローチであると考えると、それが自分の意思と意図をくみ取ってもらいたいという自己中心的な内容であれば、しっくりくるなと思いました。
他にも、研修では”伝え方の方法"として言葉だけではない文字や絵、図などを用いることが重要であることを行いました。
人は、最も簡単で楽な方法として”言葉”を多用することがありますよね。
上司が部下に対して指示・命令するときや、職員が利用者を支援するときなど、基本的にはワードの羅列で「思い通りに動いてほしい」ために言葉を使います。
しかし、この口から発せられる言葉の多用には危険性も伴うことがあるのはご存じでしょうか?
組織内で起こる人と人とのコミュニケーションエラーには、この口から発せられる言葉のみを使用することで、コンフリクトが生じることが間間あるのです。
今回、障害者グループホームBにおいても職員同士のコンフリクト、職員と上司のコンフリクト、職員と家族またはご利用者のコンフリクトが存在していました。
その理由はたった一つです。それは・・・
”言葉の捉え方や認識、受け止め方の価値観が人それぞれ”だからです。
ここが非常に難しいことなんですよね。
私もコンサルタントをしていて思うのは、言葉の使い方を一歩間違えると人の信用を瞬時に失ってしまうことです。
また一度発した言葉というのは、二度と取り戻すことはできませんよね。
この言葉の難しさを理解してもらうために、障害者グループホームBでは伝言ゲームを行いました。
伝言ゲーム
伝言ゲームではいかに言葉の使い方が難しく、どのように人に伝達するのか体感してもらうために7人で行いました。
この伝言ゲームのルールは2つあります。
ルール①:伝える言葉は1回だけ、ゆっくりと伝える
ルール②:メモを取ってはいけない
伝える言葉はこれです。
「今週金曜日の朝11時にランチミーティングが池袋の会議室であります」
↓
これが7人を介して最後にできた言葉がこれです。
「火曜日と金曜日の朝に毎週会議があります」
このように曜日数が増え、さらに時間と場所指定が消えております。さて、どれだけ伝えるのが難しいかお分かりいただけたと思います。
伝える人の伝え方が1回であり、かつメモを取らないとこんなにも内容が変化してしまうのです。
これが障害者グループホームで行われる”申し送り”だったらどうでしょうか。
基本的にノートに記載することが多いですが、言葉で伝え、聞いている人がメモを取りますよね。
一度しか伝えない、あるいは言葉だけで伝えることの危険性がここに潜んでいるのです。
5)人事評価シートを理解する
これはとても珍しい研修だったと思います。障害者グループホームBにある人事評価制度の中身について、全員で理解するという内容です。
方法は単純で、社長から人事評価の項目が記載されているシートを事前に準備してもらい、それについて、項目一つひとつについて考え、理解を深めるだけです。
人事評価の内容を理解することは、実は一石二鳥の効果があり、これを実施する目的を理解するには、まず人事評価の目的について考える必要があります。
普通、人事評価というのは年1回~2回程度実施され、その目的はおおむね”金銭的”であることが一般的ですよね。
金銭的というのは、昇給・賞与などに紐づけるということですが・・・・
医療・介護・福祉にかかわらず多くの企業・組織では人事評価制度の実施目的が、短期的かつ一時的である欲求を満たすためだけに行われている事実があります。
きっと皆さんが所属する法人・組織でも同じことが言えるのではないでしょうか。
障害者グループホームBも同じでした。
ここで人事評価制度の目的と機会の両軸で理解していきたいと思います。
1.人事評価制度の目的を理解する
結論から申し上げると、人事評価制度の目的はたった一つです。
↓
『組織目的の達成・組織のVisionを叶えるため』
人事評価はこのためだけにあります。
これを達成するための一つの手段でしかありません。
組織というのは95%は「人」で構成されており、人が機能するために5%は「ルール」となっております。
すると、組織というのは人材がいるから成り立っているということが分かりますよね。
”2人以上の役割をもった人材が目的のために集団となった”時に初めて誕生するのが組織ということになります。
となれば、組織は人が役割を遂行することが不可欠となるわけで、つまり人が機能することが当たり前であることが前提となりますので、
少なからず「人の教育や育成」も必要となるわけです。
2.人事評価を4つの”機会”で考える
人事評価制度を整え、実施する目的は「組織の目的達成」に寄与する為であるということが分かりました。
私たちFukushiVisionGroupでは、人事評価制度の在り方について改めて見直す必要があり、人事評価制度そのものを一つの『機会』として考えることはできないか?と模索したところ、以下の4つに区分することができました。
①金銭享受の機会
②異動・昇降格の機会
③人材教育・育成の機会
④コミュニケーションの機会
多くの企業や組織は①の金銭享受の機会と②の異動や昇降格の機会が多いと分析していますが、私たちFukushiVisionGroupでは特に③の人材教育・育成の機会に焦点を当てることを意識しています。
障害者グループホームBにおいても、基本的には①でした。
ですから、あえて人事評価の項目を掘り下げ、概念化・抽象化・具体化することで教育的機会として研修を行うことで、障害者グループホームBという組織・経営者が何を期待し、求めているかを理解することができます。
評価制度が年1回や2回で、そこで初めて評価項目を知るというのは、なんとも不平等・不公平な感じがしますよね。
評価項目を知っていれば、あるいはその通りに行動できるはずで、そうなれば自ずと高い評価を得ることができます。
それが本意ではないにしろ、その通り行動してくれることは組織にとっても大きなメリットですから、人事評価制度の評価項目について理解を深めることは良い研修なのです。
6)専門職研修
ここでは、障害者グループホームBで働く職員向けに専門職として成長させるための研修を実施しました。
障害者グループホームBに限りませんが、近年、障害者グループホームの質は低いと言われています。
その理由は経営者と現場で働く人の両方にあります。
まず一つ目は、経営者が全く業界を知らずセカンドビジネスを目的として参入してくることにあります。「支援の質」について考え、取り組むことをしなかったことで現場の質が大幅に下がった、あるいは低いままだったと考えられます。
二つ目は、業界未経験の転職人材が多いということです。
介護施設と異なり、介護を実施しない施設も多いため資格を持たなくても働けてしまうことは、ある意味業界の課題ではないでしょうか。
私は”資格を持つことが全て”とは言いませんが資格があることは、ひとつの基準を満たした証明だと思っています。
資格を保持しているということは、学ぶべきスキルの一定のプログラムを修了したということですから、その道の一定レベルの学習を終えたことで基礎なり応用なりを身に着けています。
看護師、保育士、介護士、社会福祉士、精神保健福祉士、初任者研修など、数ある医療・介護・福祉の資格ですが、これらを取得するために費やした学習時間と、障害者グループホームのように世話人としていきなり、業界に飛び込んでくる学習時間ゼロの人と比較すれば、前提知識や心構えが大きく異なるのは一目瞭然です。
そもそも世話人・生活支援員には「専門職」であるという意識がないことから、今回の研修は前半の社会・組織人的研修プログラムとは異なり、専門職の意識や技術について学ぶ機会としました。
1.障害者支援の基礎と障害者総合支援法
障害者グループホームの世話人・生活支援員が障害分野で働く上で、障害者支援の”基礎”の”キソ”の”きそ”となる内容からスタートいたしました。
講師を務めてくれたのは、社会福祉法人の相談支援事業所で20年以上障害福祉の支援をするベテラン講師です。
私も障害者支援の現場レベルの話は学び足りないため、同席しながら学ばせていただきました。
まずは障害者支援法について簡単に説明します。
”障害者や障害児が、基本的人権を持つ個人としての尊厳にふさわしい日常生活や社会生活を営めるように、この法律では必要な障害福祉サービスの給付や地域生活支援、その他の支援を総合的に行っています。これにより、障害の有無を問わず、国民がお互いの人格と個性を尊重し、安心して暮らせる地域社会の実現を目指しています。
対象となる障害の範囲は、18歳以上の身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者を含む)、および政令で定められた難病等による障害者です”
特に重要視されているのは『尊厳』ではないでしょうか。
障害の有無にかかわらず尊厳という言葉が特に重要視されているのは、世の中的に尊厳が損なわれているということだと思います。
私は介護業界の出身ではありますが、当時、あまり尊厳という言葉を聞いたことがなかったので、尊厳について言及していたのは、とても新鮮に思えました。
ただ、今回の研修テーマは基本の”き”ということで、尊厳について別の講師が担当しているので、深堀はしておりません。
目次はこちらでした↓
• なぜ障害者福祉の道を選んだ?
• 障害者総合支援法の概要について
• 障害福祉サービスの体系
• グループホームの役割は?
• 相談支援の役割と流れ
• 事例検討・事例紹介
• グループホームと相談支援の連携
障害者総合支援法の概念や全体像を把握してから、障害者グループホームBの職員がどのような気持ちで障害者支援をしているのかを、改めて考えさせる良い機会を作ってくれました。
また、日々専門職として支援している講師だからこそ、生の事例について相談支援事業所と障害者グループホームの連携を考えながら、障害分野における「地域連携」についても言及した実り大き研修でした。
2.利用者への向き合い方と尊厳
こちらを担当した講師は北関東エリアで介護・障害福祉事業所を経営する経営者の方です。
経営者でありながらも、普段から看護師、介護職として現場に出ながら日々、実践を通して経営と現場の融合の実現に力を注いでいます。
障害者グループホームBの弱みである業界経験者がいないということは、現場で働く上で重要な意識や考え方が不足していることです。
ただ弱みであると同時に強みでもあるのが、だからこそ”基本から学習することで吸収しやすい”ということです。
研修の中で言及していることは「共生社会の中の尊厳」です。
共生社会というのは、私も大学院に通い始めてから知った言葉で、定義は以下のとおりとなります。
「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。
それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である
※文部科学省ホームページより
障害者という言葉に焦点が当てられていると思いますが、私はそこだけを見るのではなく人間全体として”人格と個性を尊重する”ことが何よりも大事だと思いました。
研修では、グループワークを取り入れながら、日々、どのように利用者への「尊厳」を考えているかなど、専門職としての自覚を意識させながら自問自答の機会を多くいただきました。
障害者グループホームBの職員からは、個性を尊重させることと、適正な支援を実施することは時に相反することもあるなど、現場ならではのジレンマを抱えていることも明らかになりました。
そして最後のまとめで講師はこのようにメッセージを残しています。
”障がいがある、ない、性別、世代など様々な人がいます。
みんなそれぞれの立場や思いがあります。
相手のことを100%理解することは難しいです。
でも、ちょっとだけ相手の立場を考えることで、
他人事からちょっと自分事で考えられるかもしれません。
自分なりの距離感でゆるやかなつながりを持ちましょう。
そして、ちょっとだけ勇気をもって、相手のために
当たり前の目配り、気配り、心配りをしてみませんか?
それこそが、目の前の利用者さんへの
寄り添いの第一歩だと思います”
3.虐待防止と権利擁護
最後に紹介するのは『虐待防止と権利擁護』そして『意思決定支援』の研修内容です。
恥ずかしながら、私はこれまで虐待防止と権利擁護における研修を受けたことがありません。そのため、今回の研修では私も職員として勉強させていただき、学び多き機会をいただきました。
障害者グループホームBでも、都道府県が実施する虐待防止研修を受けた職員が数人いましたが、大勢の中の一人として受講するよりも、一緒に働く仲間として現場で考えながら受ける研修とは一味違ったようでした。
研修を担当したのは、社会福祉法人で相談支援事業所の所長を行っている相談員の方です。
目次は以下のとおり↓
・障害者虐待防止法について
・虐待行為の種類
・なぜ施設で虐待が起きるのか
・虐待防止のために取り組めること
・意思決定支援の定義・原則
・意思決定を支援する関わり(事例)
・なぜ意思決定ができないのか
・意思決定のためにできること
・意思決定のプロセスから(事例)
・まとめ
この研修では、虐待の定義について考え、また虐待と関連の大きい”本人の意思決定”についても言及しています。
まず、虐待の種類にはどういったものがあるでしょうか。
一般的に虐待といえば下記の種類に分けられるそうです。
①身体的虐待
殴る、蹴る、叩くなど暴力行為により他者の身体に苦痛や傷害を与える行為を指します。
②性的虐待
同意のない性的行為や性的羞恥を与える行為で、被害者の心身に深刻な影響を与えます。
③ネグレクト
養育者が子どもの基本的な生活や健康の世話を怠り、放置することで心身に悪影響を及ぼす行為です。
④心理的虐待
暴言や無視、脅迫など精神的苦痛を与える行為で、被害者の心に深い傷を残す行為です。
⑤経済的虐待
金銭の管理を強制し、必要な支出を制限するなど、経済的自由を奪い生活を困難にする行為です。
これらの虐待に対して、果たしてどのように認定されるのでしょうか。
これは2つのパターンがあります。
一つは、虐待されている本人の主観的判断です。そしてもう一つは本人の周りを取り巻く人たちからの客観的判断です。
虐待している人には、正直、虐待の自覚がありません。これは障害者グループホームで働く人たちも同じです。それが習慣となっていれば尚更気づくことができません。
だからこそ、こういった外部研修を受ける必要性があるのです。
また、障害者グループホームのように夜勤ワンオペ体制で運営している施設は、他者の目が届かないことから、虐待ケースだったとしても隠避することも可能となります。
そのため、そもそもの運営体制を見直すことも必要なるでしょう。
では、どのように虐待防止をするのでしょうか。
虐待防止に欠かせないのは、虐待の再認識が重要です。虐待行為の定義を知識として定着させ、日々、虐待に当たるか否か、ファクトチェックをすることをおすすめします。
これを実行するためには、組織の中にチームを作り、チームで虐待防止に取り組むことが重要であると講師は伝えています。
また、障害者や認知症高齢者は虐待されている認識が薄い人や、セルフネグレクトに陥っている人などは、自身の状況を客観視できないため、気づかないで衰弱していくのです。
こういった場合でも、例えワンオペ夜勤の障害者グループホームでも虐待防止チームを作り、日々の生活情報を共有することで虐待の発生を防ぐことは可能になります。
虐待は”慣れ”から発生し、慣れは集団で作られる可能性があるため、障害者グループホームの質を保ち向上させるためには、障害者グループホームBのように毎月、定期的に人材育成・教育的研修を取り入れる必要があります。
次に意思決定支援です。
講師は、虐待防止と権利擁護の研修に”あえて”意思決定支援を付随させたと言います。
その心は、支援者側が利用者を支援する際にコントロールするという領域に入ってしまった最上級が虐待に発展するということであると、私は解釈しています。
つまり、利用者支援の際、常に「意思決定支援」だということを認識していれば虐待は起こりえないということだと思います。
これは親子関係でも同じです。
子どもをコントロールしようとするあまり、過剰な言動・行動が最終的に虐待にあたると判断されるのです。
私は親として、人のことを言える立場ではありませんが、相手を尊重し意思決定をゆだねることを意識すると、虐待は防げるのだと理解しています。
おそらく、医療・介護・福祉業界の専門職においては、利用者との関係性が自ずと「上下」になってしまうのは、最初の段階では避けられないことなのかもしれません。
今回の障害者グループホームBのように、尊厳、意思決定支援といったワードを深堀し、再認識させるような研修を本来は資格を取得する学校のカリキュラムにいれるべきですが、おそらく”浅い”のだと思いいます。
「支援者」という立場になった時点で”支援する側”と”支援される側”の無意識の立場構造が出来上がってしまっていのです。
意思決定支援を学ぶことで、この無意識の立ち位置を改めて見直すことができるので、虐待防止と権利擁護、そして意思決定支援を結びづけた研修構成は非常に良いものでした。
最後に講師はこのように研修を締めています。
自分の人生は、自分で決める。
そのことにこそ価値がある。
自分で決めた事は納得できる。
一人で暮らしても、家族と暮らしても
みんなで暮らしても…
地域で暮らしても、施設で暮らしても…
自分らしく生活できる事が大切。
私たちは、ご本人の意思を尊重する
そのために、支援している!
以上、研修内容でした。
Vol.3 研修の成果について
さて、ここまで研修内容の詳細について解説をしてきました。内容をすべて記載するのは難しいため、概要的な部分も多かったのですが気になる方はぜひ、私たちの研修を受講くださいませ。
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研修の成果について
気になるのは研修を行ったことで、どのような成果が出ているのか?ということです。
障害やグループホームに限らず、このような外部研修を取り入れないのは「研修の成果が見えづらい」ことにあります。
お金はかかるのに、研修の成果が見えづらければ経営者として研修を取り入れる判断はできませんよね。
しかし、障害者グループホームBのように自社で研修を行う余力とノウハウがないことを自覚した上で、研修の成果も畑に種をまくように実りに時間がかかることも、理解した上で実施すると成果を実感できるのです。
これまで1年半、研修を行ったことでどのような変化が起きたか見てみます。これは実際に障害者グループホームBの経営者からいただいた成果の内容です。
①組織の中に学習する機会が習慣化された
②利用者支援に対する姿勢・発言に変化があった
③管理者が管理者としての自覚が出てきた
④社内会議における発言が増えた
⑤申し送りの内容量が増え、質が良くなった
残念ながら「クレームが減った」「売上が増えた」「離職率が下がった」などの具体的な経営数字を比較できたわけではありません。
本来は、これらの経営分析項目が研修を実施する前と後で比較できるといいのですが、そこまで考えて研修を取り入れる経営者は中々、いません。
しかしながら、研修を始めてから明らかに数字では表れない人間的側面、支援者的側面において肌で感じてポジティブな変化があったと評価をいただきました。
つまり、研修を導入する際、ほとんどの組織は感覚的な危機感から始めることが多く、成果について導入前後で比較することはありません。
そのため、研修に対する成果が比較分析できないことで、研修導入に要する費用対効果を図れず、時間とお金を無駄にしたという事例が多いのです。
そこで、私たちの提案としては医療・介護・福祉事業において、研修予算を設けてその範囲で『必要経費』として計上することをお勧めしています。
今回の障害者グループホームBのように1年半で目に見えて成果が出てくるパターンがほとんどだとするならば、時間的継続性と内容的変化性を伴って実施する必要があるのです。
今後、より競合が増えてくる障害者グループホームにおいて『質』が問われてくることを考えれば、研修の必然性を理解いただけるはずです。
その時は、ぜひFukushiVisionGroup(フクシビジョングループ)にお任せください。
それでは。
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