在宅医療・在宅介護の分野において「地域連携力」が重要とされる背景には、いくつかの社会的・構造的な要因が重なっています。

​

まず、少子高齢化が急速に進行する中で、医療・介護の需要は年々増加しています。一方で、医療資源には限りがあり、特に入院を必要とする病床数は政府の方針により段階的に削減されています。このような状況下では、住み慣れた地域で療養を継続する「在宅ケア」の重要性が高まり、病院から地域へ、そして多職種による支援体制へのシフトが求められています。

​

さらに、在宅分野への新規参入が相次ぎ、訪問看護や訪問介護、訪問診療などのサービス提供事業者間で競合が激化しています。差別化が難しい中で、単なるサービス提供だけでなく「地域とのつながり」や「顔の見える関係」が強みとなり、地域の関係機関や住民から選ばれるかどうかを左右します。

​

また、在宅医療・介護では、患者一人を多職種で支える必要があり、訪問看護師、ケアマネジャー、主治医、薬剤師、リハビリスタッフなどの連携は不可欠です。情報共有や支援の継続性を担保するためには、相互理解と信頼関係に基づくネットワークが構築されている必要があります。顔の見える関係性があれば、緊急時や判断に迷う場面でも、迅速かつ柔軟な対応が可能になります。

​

このように、在宅医療・介護の現場では、制度・需要・競合といった環境変化に対応しながら、利用者本位のケアを実現するために、地域内の多職種・多機関との連携力が不可欠であり、それが事業の持続性や信頼性にも直結するのです。

​

​「地域連携力」とは、すなわち必要な知識と考え方を身につけながら、質の高い支援を行える専門職が配置される事業所が生き残り成長と発展するために欠かせない”能力”となります。