できる人材の条件
1.自律と自立
私が専門職大学院での研究において、カッツモデルを参考にして構築したのが『自律型の人材育成モデル』です。
本書のテーマは「組織力」である以上、人材の教育・育成という観点についても触れておく必要があります。
人材育成における最終的なゴールとして、経営者は常に「人材の自律化」を目指しています。
そして、それによって組織運営が自動化されていく状態を望んでいるのです。
「ジリツ」には、「自立」と「自律」という二つの意味があります。
自立とは、上司や周囲の指示を受けながらも、与えられた仕事を主体的に選択し、実行できる状態を指します。
つまり、ミッションを与えられたら確実に遂行できる能力と行動力を備えている状態です。
2.できる人材の条件
組織において、いわゆる“できる人材”とされるのは、この自立ができている人です。
しかし、経営者や組織が本当に求めているのは、「自立」ではなく「自律」です。
自律とは、与えられた仕事をこなすだけでなく、与えられる前から組織全体の状況や最終的な目標・目的を理解し、自分の立場と能力から「今、何をすべきか」を見出し、能動的に行動できる状態を指します。
組織において、自己の役割を正しく認識し、自ら動くことができる人材の存在は、経営者にとって極めて大きな価値となります。
私自身も、かつて受け身で、限られた能力の範囲でしか動かない人材を採用してしまった経験があります。
その結果、非常に苦しい思いをしました。
このような受動的かつ他律的な人材は、組織において「人罪」となり得ます。
仕事に対する覚悟や責任を持たず、常に自己保身を優先する人材は、組織にとって負債となってしまうのです。
3.人材と人財
こうした採用を防ぐためにも、有期雇用の活用は一つの有効な手段だと考えています。
ここで少し視点を広げ、「四つの人材」について整理しておきます。
まず一般的な「人材」に対して、組織に利益をもたらす存在を「人財」と呼びます。
これは、組織にとって“財産”であることを意味しています。
しかし、医療・介護・福祉業界では、この「人財」という言葉が多用されている一方で、その定義や根拠が曖昧なまま使われているケースも少なくありません。
むしろ「人を大切にしている」と強調しなければならない状況そのものが、これまで十分に人を大切にできてこなかった証ではないかと感じることもあります。
本当に人を財産と捉えるのであれば、それに見合う体制整備や、マネジメント層の意識改革が不可欠です。
こうした取り組みは決して容易ではありませんが、組織の変革や成長促進を実現し、本当の意味で「人財」を育てていくためには、私たちのような外部コンサルタントを活用することも有効な手段の一つと言えるでしょう。
4.ただ"いる”だけの人在
次に「人在」です。これは、成長や利益創出の段階から後退し、単に組織に所属しているだけの状態を指します。
決められた仕事はこなすものの、人件費や社会保険料、間接費などを含めると、組織にとっては収支が±0、つまり“ただ在るだけ”の存在です。
この状態は本人の意思だけでなく、組織の環境にも影響されます。
すべての人が自ら価値を高められるわけではないからこそ、組織は常に活躍の機会を提示し続ける必要があります。
ただし、その機会を受け入れるかどうかは本人次第です。受け入れなければ、結果として停滞は続きます。
「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲むかどうかは馬次第」
これはアドラー心理学で語られる象徴的な言葉です。

5.いるだけで罪な人罪
最後に「人罪」です。
これは、組織に負の影響を与える状態にある人材を指します。
在るだけではなく、売上を生まず、人件費を消費し、周囲の成長機会を奪い、自らの立場を守ることに終始する存在です。
特に医療・介護・福祉業界では、人員基準や施設基準を満たすために雇用を維持せざるを得ないケースも多く、事業の存続との間で難しい判断を迫られることも少なくありません。
人材定着とは、単に人が辞めない状態を指すものではありません。
「人材」と「人財」に焦点を当てながら、「人在」や「人罪」を生み出さない仕組みを構築し、組織に貢献し続けられる状態を維持していくことです。
そのためには、働く意欲を高め続けられる環境づくりと、適切な機会提供が欠かせません。
学びが力となり、その力が組織の成果へとつながる。この循環を生み出すことこそが、人材育成の本質ではないでしょうか。
さて、ここで「他律」という言葉について触れておきます。
他律とは、行動や判断の基準が自分の内側ではなく、上司の指示や組織ルール、周囲の期待といった外部要因に強く依存している状態を指します。
「自立」よりも受け身であり、常に指示を必要とするため、自己判断で仕事を進めることがほとんどできません。
また、このような人材は、組織ルール・組織目標・自己の役割に対する認識や理解が不足している傾向があります。
そのため、仮に主体的に行動したとしても、方向性や内容がずれてしまい、結果としてやり直しになるケースが少なくありません。
もしかすると、「責任を負うこと」を避けるために、あえて役割やルールを深く理解しないという無意識の選択をしている可能性もあります。
カッツモデルが職位に応じた必要能力を示すのに対し、私が提唱する『自律型の人材育成モデル』は、「他律」「自立」「自律」という三段階で構成されています。
すなわち、下位が「他律」、中位が「自立」、上位が「自律」です。
そして各段階において、「組織ルール」「自己の役割」「裁量権」に対する理解度を、絶対量として捉えています。
私は、組織問題の多くは、一定数存在する他律的人材に起因していると考えています。
そのため専門職大学院では、人材育成と人材教育をテーマに、経営者がなぜ「外部研修」を導入しないのか、その理由を明らかにするとともに、どのような研修プロダクトであれば効率的に成果を生み出せるのかを検討してきました。
その結果、研修において重要なのは、学習ピラミッドに基づいた“超参加型”の体験学習であるという結論に至りました。
自己の役割、組織のルール、そして自己の裁量権の理解は、仕事を遂行するうえで不可欠な要素です。ぜひ、カッツモデル(カッツ理論)と併せて、人材教育・人材育成の実践に活用してほしいと思います。
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プロフィール
FukushiVisionGroup株式会社
医療・介護・福祉経営コンサルティング
塚本洋介(社会福祉士・福祉マネジメント修士)
千葉商科大学商経学部経済学科卒業
日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科修了
公式YouTubeチャンネル「福祉経営コンサルの豆知識」

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