おはようございます。
FukushiVisionGroup株式会社(福祉ビジョングループ)の塚本です。
今回は、サービス付高齢者向け住宅の人材採用支援における失敗事例について解説していきます。前回に続き、コンサルの失敗事例は中々、おもしろいようです。
過去、40社以上支援してきましたが、コンサル導入が失敗か成功か。
これは、最終的にはお客様が決めることです。
どんなに成果が出ても、どんなに職員さんたちと一致団結しても、導入が失敗だったのか、成功だったのか、費用対効果はどうだったのか。
これらはすべて、意思決定する経営者の判断となります。
今回のサービス付き高齢者向け住宅の人材採用支援は、中々苦労しました。
社内から私たちコンサルに対する”嫉妬”から、あらぬ疑いをかけられたりもしました。
しみじみ思うのは「100企業100通り」ということで、同じものは存在しません。ということはコンサルティング支援もフォーマット化できないということです。
常に企業や経営者に合わせてカスタマイズされた『提案』や『柔軟な思考』が必要となるのは、コンサルタントの実力が試される実践的訓練所ではないでしょうか。

【目 次】
・登場人物
・施設概要
・経営課題
・支援概要
・結 論
・課長の存在
・契約前面談
・初期支援と分析結果(定量調査と定性調査)
・採用プロジェクト提案
・採用代行支援
・職員紹介制度
・会議参加と見直し
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Vol.1 あらすじ
今回のご支援は、サービス付き高齢者向け住宅の建設をいくつも行っている歴史ある不動産会社が直経営する"3棟のサービス付き高齢者向け住宅"に対する「人材支援コンサルティング」となります。
ちょっと、分かりづらいかもしれませんので説明いたします。
つまりは、お客様は不動産会社です。
そして、対象となる施設は不動産会社が経営する3つのサービス付き高齢者向け住宅です。
そして、この不動産会社はとても歴史のある会社であり、不動産の賃貸・売買だけではなく一般戸建てやアパートの他に介護施設も建設しているのです。
これまで数十棟のサービス付き高齢者向け住宅を建設し、中には運営管理を代替している施設もあるとのことです。
今回私がご支援したのは、この不動産会社Aが運営管理する直営のサービス付き高齢者向け住宅3棟です。
登場人物は以下のとおりです。
登場人物
社 長
副社長
取締役(施設長Cを兼務)
課長 (不動産会社側)
入居相談員Dさん
入居相談員Eさん
施設長A
施設長B
施設長C
ケアマネジャーD
サービス提供責任者A
サービス提供責任者B
サービス提供責任者C
事務員F
施設概要は以下のとおりです。
施設概要
不動産会社(親会社&経営本部)
サービス付き高齢者向け住宅A(訪問介護事業所A併設)稼働率9割
サービス付き高齢者向け住宅B(訪問介護事業所B併設)稼働率7割
サービス付き高齢者向け住宅C(訪問介護事業所C併設)稼働率5割
居宅介護支援事業所D
「C」には施設長として、ケアマネジャーの資格持つ親会社の取締役が配置転換されています。取締役は元々、特別養護老人ホームの施設長経験があったことから、任命されたのだと思います。ただし、これは本人も言っていましたが相当に不本意だったようです。
コンサルタントとして、最も苦労することは、こういった会社への不満を抱えた人たちの多くはコンサルのイメージが相当に印象が悪いということです。
親会社または経営者への不満が多い従業員がいると、コンサルというのは経営者の味方であるというイメージが強いため、容易に関係性を構築することはできません。
今回の支援も、マイナス100からのスタートでした。
経営課題
1.クライアントが認識している経営課題
人材採用
入居促進
※ありがちな結果論しか認識できない場合の課題
2.私たちが認識している経営課題
親会社と施設との関係性悪化
売上や入居数に対する過剰な数字マネジメント
各施設の不統一な運営ルール設定
※これにより、結果的に人材定着と入居促進という課題があると認識
支援概要
1.支援内容
①初期支援Ⅰ(構造分析と定量分析)
②初期支援Ⅱ(内部分析と定性分析)
③採用代行支援
④職員紹介制度の推進
⑤会議の見直し
⑥定例会議
⑦資料作成と様々な提案
2.契約期間
6ヵ月間
3.訪問頻度
月2回程度 / 1訪問あたり3時間
4.費 用
初期費用:440,000円(税込)
月額費用:220,000円(税込)
結 論
今回の人材支援・採用支援は、結果的にお客様の満足度が低く失敗に終わってしまいました。
お客様が求めていた採用支援の期待値は、すべて丸投げの代行支援でありコンサルに任せていれば勝手に、人材が流入してくるというものでした。
私たちの敗因は、期待値のすり合わせとコンサルと社内の協業体制を作れなかったことにあります。
結果的には私たちが支援に入る前の数字とは大きく異なり、以下の通りとなりました。
項目 | 応募者数 | 採用数 |
支援前 | 7名 | 0名 |
支援後 | 32名 | 6名 |
前後の差 | +25 | +6 |
一般的に見ると、人材採用支援の結果としては成果が出ていますが、お客様の満足度が低く、そして課題があるにも関わらず”新しい提案が通らなかった”ことは、コンサルティング支援の失敗と言えるとでしょう。
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Vol.2 コンサルティング支援導入前
課長の存在
今回のクライアントを不動産会社Aとします。
この不動産会社Aと繋がった経緯は、弊社と親しくしている税理士事務所です。担当税理士の方から、保育園の理事長を紹介いただき、そして不動産会社Aの副社長を繋いでいただきました。
最初のお困りごとは”あらすじ”でも話したように人材不足と入居稼働率です。
不動産会社Aは地域ではとても地盤の固い不動産屋であり、施設建設以外にも賃貸、戸建て、マンション販売等を行っております。
従業員も50人以上はおり、安定した中小企業と言えるでしょう。
今回の契約までに、私は二度訪問しております。
一度目は単なる挨拶に、二度目は提案書を持参しました。一度目と二度目の間には概ね3ヵ月以上空いていたと思います。
そして、提案書と私という人物を買っていただいたのか、今回の契約に至ることになりました。
実は、弊社と不動産会社Aの副社長との間に、介護施設には関係ない若く優秀な課長が間に入っており、この課長がコンサルティング導入を強く勧めてくれたのも契約への後押しとなりました。
この課長がいなければ、きっと契約にはならなかったと思います。課長がコンサル導入を進めてくれた理由の一つに、自分の仕事(不動産の本業)が介護施設の経営悪化によって脅かされるからと話してくれました。
つまり、取締役と同じように未経験人材が直営で運営管理する3棟のサービス付き高齢者住宅に異動になる可能性があるということです。
異動になった人材が戻ることは皆無であり、永遠と施設勤務となることから避けたかったとのことでした。
契約前面談
契約前に、この課長含めて副社長、そして施設異動となった取締役と契約前の最終面談を実施しました。
ここでの目的は3つです。
①支援方法の確認
②支援目的の確認
③期待値の確認
⇒③の期待値の確認が甘かった、また期待値がズレていることに気づいていながらも契約ほしさに甘い期待値のすり合わせをしてしまった。
ここが今回の支援の敗因ポイントだと考えています。
また徐々に期待値が変化することを、当時は経験不足だったこともあり”気づくことができなかった”というものあります。
いずれにせよ、私の落ち度となります。
①支援方法の確認
コンサルタントがどのように不動産会社Aに対して支援をするか訪問時の支援、オフィスでの支援について確認します。
オフィスで採用代行支援を行いつつ、施設自ら採用活動を自走できるよう助言や指導をするため月2回程度の訪問支援をすることをすり合わせました。
また、メール・LINE・電話を含めた相談に関しては制限を設けず、応募者の進捗管理に関しても弊社が逐一チェックすることとしました。
ここで、重要なのは私たちのカウンターパートナーです。
基本的には現場にいない副社長となり、また取締役兼施設長の2名が伴走相手となりました。
②支援目的の確認
支援目的は専ら人材採用です。
各施設に不足している人材を補充することが目的となりますが、主に必要なのは夜勤の介護職員です。
サービス付高齢者住宅のため施設長以外の職員は、基本的に施設に併設されている「訪問介護事業所」への配属となります。
しかし、3棟あるサービス付き高齢者住宅に併設している訪問介護事業所は2つしかありません。
3つのうち、場所が近いのが2棟あることから一つの訪問介護事業所が2棟分の支援を行っているということになります。
ここが・・様々な課題を生む要因でもあったのです。
また表面上の目的は人材採用ですが、根本的な組織課題は「現場と経営の対立」にありますから、私たちコンサルタントは表面かつ急ぎの問題に着手しながら、根本的な時間のかかる課題も見据えて行動しなければなりません。
③期待値の確認
この「期待値」というのは非常に重要なもので、コンサルタントは期待値のすり合わせを初期段階で行い、そして随時、期待値の変化を伺うことを怠らないようにしなければなりません。
今回の不動産会社Aにおける人材採用支援の期待値のすり合わせは2つでした。
①介護職員を確保する
②採用活動の仕組化(自走化)をする
③採用が終わったら入居促進を行う
残念ながら③の入居促進支援までは届かずに、6ヵ月で契約は終了してしまいましたが①と②については確実に行いました。
ここで、私たちが失敗してしまったのは副社長の本心をくみ取れなかったことです。
つまり、①の介護職員の確保だけを目的としていた副社長に対して、それだけでは意味がないと②を提案して同意を得たことでズレが生じてしまったのです。
よくあることですが、組織の継続と発展という長期目標を見据えるコンサルタントに対して、目の前の課題解決だけを望むクライアントとの期待値、認識、考え方の違いが露呈したということです。
コンサルの希望とクライアントの希望のズレですね。
しかし、私たちは後悔していません。
なぜなら、人材が流出する組織の本当の課題は、組織の中にあるからです。
これまで支援してきたお客様の中で、仕組みができることで採用コストが大幅に削減され、そしてコンサルタントに頼ることもなくなるため、適正な仕組化はどのような組織でも必要だと考えています。
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Vol.3 支援開始
ここでは、不動産会社Aが経営するサービス付き高齢者向け住宅と併設する訪問介護事業所に対する具体的な採用支援の内容について振り返りながら、解説したいと思います。
6ヵ月間の支援で行ったのは下記の内容です。
1.初期支援と分析結果
1)定量調査
定量調査の目的は、過去7年間でどれだけの人材が、どのように流動しているか数字で把握することで、数字から課題を見つけ活路を見出すことです。
コンサルティング導入前に、具体的な人材採用の数字を質問しても副社長、取締役、課長からは回答がないため、どのように支援すべきか悩むところでした。
そのため、コンサルタントとして契約前にある程度の予想と想定のもと「提案書」は作成しますが、実際に支援する場合にはより短期的かつ効果的に求める成果を出すためには、綿密な調査が必要となります。
その一つの根拠が「数字」です。
数字は嘘をつかないというのは事実ですが、数字を入れるときに嘘をつくこともできたり、その数字の根拠はタイミングや状況によって変化した結果であることから、100%信用することはできません。
参考までに今回の定量調査の結果を一部、共有いたします。
調査①:過去7年間の年代別採用人数

▶ 50代を採用する傾向が強い
▶ 76%が40代以上の職員が占めており若い人材が少ない
これはどの事業所でも当てはまることで、ここに限ったことではありません。
調査②:過去7年間の年別入職推移

▶施設を開業した2015年が最も入社しており、直近の2021年も大量に入職している。
▶一番最近の2022年がこれまでに最も少ない。
ここから分かることは年別に人材流入推移が大きく異なることから、少ないときと多いときに"何かがあった"ということくらいです。
調査③:過去7年間の年別退職推移

▶ 開設した2015年に55人の入職者のうち24人がその年に退職している。
▶ 2018年以降の4年間で約70人が退職している。
これは大量入社、大量離職という相当に悪い循環となりますね。これだけ見ても大きな課題があることが分かります。
調査④:過去7年間の入社媒体統計

▶ 職員紹介が比較的多かった。
▶ 集計をしていないため不明が多い。
実はここが大きな問題なのです。結局、どのような媒体で採用したのか記録が残っていないため戦略を検討しづらいく、ここから行う戦略は一般的な採用戦略になってしまうのです。
不明媒体が明確であれば、不動産会社Aの採用に関する特徴が表れているはずであり、そして地域特徴も踏まえた採用戦略を検討することができるのです。
2)定性調査
定性調査の目的は、数字では分からない事実を見極めるために「職員の生の声」を中心としたインタビューやヒアリングを行うことです。
コンサルタントは、当てずっぽうで支援をすることはしません。
これはつまり、一部の話だけを聞いて推測で戦略を検討し実行することです。材料が非常に少ない中で直感だけで支援するのは、お客様にとって「悪」でしかありません。
また数字だけでを見て事象や課題を真実だと判断してしまうと、間違った方向に戦略が進んでしまうのです。
初期支援では限りなく真実を導き出すために、定性調査も確実に行い経営と現場の声を引き出すことが重要なのです。
こちらも参考に不動産会社Aにおける定性調査で、職員インタビューを実施したので共有したいと思います。(※個人や事業者が特定されないために一部加工済み)
【設問内容】
①現状の仕事の不安
②会社への期待
③会社の課題
【定量評価】
④仕事の意欲
⑤働きやすさ
⑥ストレス
設問①:現状の仕事への不安を教えてください
・自分の実力以上のことを実施しているので限界かもしれない。(サ責)
・不安しかない。仕事のミス、コロナ、職員の負担を減らすにはどうするか。(施設長)
・仕事について相談できる人がいない。(居宅ケアマネ)
・前のケアマネのミスを拭うのは厳しい。(居宅ケアマネ)
・人が定着しない。人間関係で辞めていく。(施設長)
設問②:会社への期待
・なし(全員回答)
設問③:会社の課題
・本社(不動産会社A)が数字目標しか掲げていない。(施設長)
・本社の人間と施設現場とのコミュニケーションが取れていない。(サ責)
・一貫性、方向性がない。(事務員)
・全施設で役割分担がされていない。(ヘルパー)
・3施設とも同じなのに契約内容や支援内容が異なる。(施設長)
設問④:仕事の意欲
回答者7人
高い:3人
普通:4人
低い:0人
設問⑤:働きやすさ
回答者7人
高い:1人
普通:4人
低い:1人
設問⑥:ストレス度合
回答者7人
高い:4人
普通:2人
低い:1人
上記以外にも20以上の質問を行い、それぞれの職員が考えていること、課題を整理しました。
この内容を見ると、絶対に数字だけで判断することはできない「組織経営」の闇の部分が職員からヒアリングできることが分かります。
特に職員は常に不安を抱えて仕事をしていること、会社への期待が全くないこと、適切なコミュニケーション、経営と現場の関係性が悪いことはインタビューして初めて聞き出せることなのです。
経営というのは「人の働き」によって成り立つものですから、どれだけ真実の声を聞き出せるか?ということは非常に重要なの支援なのです。
2.課題の整理
これまでの初期支援から、不動産会社Aが運営するサービス付き高齢者向け住宅の課題が様々発見することができました。
経営と現場のそれぞれの課題を整理し、そして、最後に抽象的ではありますが、まとめたいと思います。
1)経営側の課題
経営側の課題は、現場側の人間が言っているとおり数字でしか判断していないことです。これは経営を考えるなら当然のことであり、至極全うな内容です。
しかしながら、数字だけで現場を判断するのは不可能です。
経営側に足りていないのは、数字を見て現場に足を運ぶことです。数字が何を意味しているかのか、読み取ることができない場合は理解できるまで現場に行かなければなりません。
かつて私が勤めていた「木下の介護」は木下グループの会長が、高頻度ですべての施設を訪問し施設の乱れや施設長の意識を強制的に是正していました。
会社の方針に対して、異を唱えるものがおり統一性を乱す場合は次の日から仕事が無くなるほどです。
最初はそこまでするのかと驚きましたが今なら分かります。
会社を成長させ、良いサービスを提供するには会社の規模に関わらず、厳しい決断をしなければなりません。
どんなに能力が高くても、経験が豊富でも会社の矢印に合わせず、独自を貫く人間は不要なのです。
もう一つの大きな課題は、経営が現場を信用していないことです。
もちろん、最初から信用してなかったことはないと思いますが、これまでのコミュニケーションの蓄積の結果、お互いが信用できない関係性になってしまったのだと思います。
この原因は、経営が現場に過剰に配慮しすぎたことだと考えられます。
母体が不動産会社であり、介護事業を始める際に本体に介護経験者が不在のまま始めたことから、どうしても現場の意見が強く、現場を知らない経営幹部からしたら”現場の言いなり”になるしかなかったと言っていました。
この結果、現場は経営陣に対して”もの言う現場”に変貌してしまったのです。
そこから常に現場に気を遣う経営と、いつでも文句を言える現場との関係性の中で、経営から現場に対しての適切なコミュニケーションが欠けていったのだと考えられます。
2)現場の課題
現場の課題は、経営に対して自分たちの範囲や役割の線を越えて、言いすぎることです。
さらに言えば、それは主観的な内容が多く誰も客観的に自分たちの現状を見ようとしません。
必要な時には経営側に頼みごとをし、普段は経営からの指示に従いません。
つまり、自分勝手な運営を施設長とサービス提供責任者が行っているということです。
本来、サービス付き高齢者向け住宅の施設長や、訪問介護事業所のサービス提供責任者である管理者は『経営と現場』の視点を半分ずつ持つべきですが・・・
完全に自分たちの居心地の良い帝国を作ってしまったのです。
私が初期支援で分析を行う際も、非常に非協力的でした。
人材が不足しているという現場の声の事実を確認するため過去のシフトを調査したときも、自分たちに不都合な事実が判明するのが嫌だということで、中々資料を出してくれませんでした。
運営側として現場の責任者である2人は、数字も意識しなければならず、これは経営側の意見は正しいです。
つまり、根拠もないまま現場は現場の都合の良い内容ばかり伝え、経営側が協力することは当たり前、自分たちは協力しないという姿勢は正直、社会人として終わっています。
こういった人材を”終わっている”と一言で片づけてしまうのは簡単ですが、これらの人材について時間の投資と比較したときに、投資効果を期待したときには私たちは、個別に面談をすることで修正と是正を繰り返していきます。
3)結 論
すべての責任は不動産会社Aの経営側にあります。
責任はすべて組織の代表が負うのが仕組み上、当然のことなのです。
しかし、だからと言って現場に責任が無いわけではありません。
運営を滞らせ、非協力的な態度や行動はおそらく雇用契約書や服務規定に違反するものです。
その責任を問われ、場合によっては配置転換や解雇というこも考えられます。
ただ、実はこのような責任論を語ってもあまり意味がありません。
今以前の事象というのはすべて”過去のこと”であるため、これからを考えるのです。
相互に不足している信頼関係を取り戻し、お互いがそれぞれの役割を果たし一枚岩になることが最優先に求められます。
今回の支援では、この『一枚岩』もテーマの一つになっており、コンサルティング失敗談ではありますが、とにかく足掻いてみましたというのが結論となります。
2.採用プロジェクトの提案
さて、不動産会社Aが運営する3棟のサービス付き高齢者向け住宅の近々の課題を解決するために、私たちは経営コンサルタントとして『採用プロジェクト』を提案いたしました。
このプロジェクト実施するためには、プロジェクトに参画できる人材を選定してなければなりません。
そのために、初期支援の中で「組織体制の調査」を行いました。
調査を行った結果、今の組織体制では目標達成が難しいと判断したため、下記のとおり編制提案をいたしました。

このように組織図を整理すると非常に分かりやすいですよね。
特に重要ななのはエリアマネジャーの配置です。
現在、取締役兼施設長が基本的に各施設を取りまとめている状況ですが、それでも各施設の責任者をコントロールできない理由があります。
それは責任と役割が曖昧であることです。
責任と役割が曖昧ということは、それぞれの職員が自分の理解と考えに基づいて解釈しているということです。
各職員が、誰が何を担っているのか?
認識を一致させることが現在の混乱を正しく導くには必要なのです。
①プロジェクト内容
プロジェクトに参画させるメンバーと期間(案)を下記のように提案いたしました。
関係性が悪い不動産会社Aと現場を含めた人員をあえて、取り込んだ形式としました。

あくまでも私たちコンサルタントは一時的な代替機能として、そして目標達成ができるように知識や知恵を戦略として提供し、またビックイシュー(大きな課題)について議論する機会を作るのです。
しかし、本来あるべき姿だと思うのです。
各施設・事業所の長が集まり、組織の発展と成長のために”話し合う”など当然だと思うわけですが、どうしても規模が大きくなると難しくなるようです。
②取組み方法
1.試行錯誤を繰り返し全員で採用に取組み現状の課題を打破する。
2.無料媒体をフル活用しコストを抑えながら人材確保を実現する。
3.希少職種の採用は予算内で有料媒体または紹介会社を活用する。
4.採用フローを構築する。
また、使用する媒体と特性は以下の通りとなります。

将来的に自走することも考えると、すべての採用活動を代行するのではなく分担方式とすることでコミュニケーションを図りながら、進めることができます。
当時は無料媒体で採用することが可能でしたが、今は無料媒体でも有料課金しなければ応募者を集めることができません。
ローカルエリアということもあり、インターネット媒体だけではなく『地域新聞等』の紙媒体も活用することで、正社員ではなく「パート社員」を採用することができます。
一見、応募がこないように見えますが実はポスティングというのは、とても理にかなっています。
ポストがない家はありませんから、エリア(範囲)を設定し、直接的に不特定多数の家に募集チラシを投函することで、確実に見てもらうことができます。
実際、一定の媒体は活用していたものの、その機能をフル活用できておらず結局は紹介業者頼みになってしまい、数百万円のコストを無駄にしていたことから、各媒体ごとの予算を設けることが適切だと考えています。
③採用フローのイメージ
下記は採用フローのイメージとなります。基本的には採用の適切な流れとして実施することでアンマッチの入社を防ぎ、離職を減らすことができるよう組んでいます。
これまでの不動産会社Aの採用方法は、応募が来た時点でとにかく採用するという事態が発生しており、また仕事や働き方におけるお互いの懸念点を払拭することなく入社に至るため、認識のズレが大きく生じてしまうのです。
この結果、そもそも応募が少ない土地において、唯一来てくれた人材が去っていくという事態が発生いたします。
この採用フローの中で特に重要なのが、STEP2の一次対応です。
一次対応では、応募者に対して基本情報となるアンケートを送ります。私たちはそのアンケートの返信と内容をもって、次のアクションに移行するのです。
その次のアクションとは、以下の2つです。
①電話対応
②オンライン面談
この2つが採用におけるプロセスでは超重要なのです。この2つのプロセスを適切に行うことで施設見学におけるカジュアル面談が成立するという流れです。
実際に、丁寧な採用プロセスは応募者の不安や疑問を解消することができ、そしてお互いが良好な関係のもとSTEP3の面接に進むことが可能となります。

④採用会議の方法
不動産会社Aが運営するサービス付き高齢者向け住宅で行われる会議というのは、現場の方々からの意見が多かったように「数字合わせの会議」のみとなっていました。
本来なら、数字も含めて支援内容、利用者状況の報告、ヒヤリハット等の『支援』に関する事項も話し合うべきでしたが、会議は常に「入居数」と「売上」のみとのことでした。
当然ながら、採用に関する会議をすることはなく人材採用に関連する各施設での話し合いもありません。
そこで、採用プロジェクトの「柱」として全員が集まって話を行う採用会議について提案いたしました。
採用会議で話し合うことは、以下の通りです。
〇実績を数字で確認する
・採用活動の取り組み実績
・応募者数
・面談数
・面接数
・辞退数
・入社予定数
〇施設担当者からの進捗情報共有
・応募者の性質
・面談/面接後のフィードバック
・辞退に対する振り返りと反省
・採用活動に対する新しい取り組み
これらをもとに、現状の採用課題に分析し、取り組みの漏れや遅延を防いでいきます。
しかし、難しいのは「現場が忙しい」ということで、前回の会議で決定したことは進まないことです。
コンサルは確かに日頃から、LINEを活用し情報共有を行いますが具体的に期日を守って取り組めるように現場で指示することはしません。
それは今回の支援契約外となっているからです。
この採用会議こそが、採用活動を進めるにあたり最も重要な『機会』なのです。
⑤社内紹介制度の提案
プロジェクトでは人材採用に最も欠かせない「社内紹介制度」を提案いたしました。
社内紹介制度が重要な理由は、2つあります。
ひとつは離職が少ないことです。
入社後の短期間の離職のほとんどは”様々なアンマッチ”によるものが大きいのですが、社内で既に働いている人材からの紹介であれば、アンマッチが少ないため継続して勤務する可能性が高くなります。
なぜアンマッチが少ないのでしょうか?
それは紹介者である従業員が、社内の内情や働く条件、働き方を細かく伝えているからです。紹介された側も、友人や知人であることから面接とは異なり、気兼ねなく情報を納得するまで聞くことができます。
ある程度、納得と理解をしてから面接に至るのでアンマッチが少ない状態で入社できます。
不動産会社Aが運営するサービス付き高齢者向け住宅の入社実績をみると、開設時には多くの職員が入社していますが、大半は職員紹介なのです。
そのため、数値的根拠からも分かる通り、ここでは再度、社員紹介を促進するための制度を設ける必要があるのです。
ただし、課題は何といっても現場から会社に対する不信感です。
この不信感が渦巻く中で、知人・友人を紹介してもらえるかが大きなポイントです。
6.採用代行支援
不動産会社Aが運営するサービス付き高齢者向け住宅の採用代行支援です。
採用活動は、応募者獲得と組織が採用を自走できるようにすることを目的として、OJT的要素も含めた支援となります。
コンサルである私たちと、施設長兼取締役であるCさんと一緒に進めました。
前述したとおり、結果的には応募者数+25名、採用人数+6名となり、支援結果としては良かったと思います。
自走も考えると、すべてを代替するというよりは”できることはやってもらう”ことを意識して、役割分担を明確にいたしました。
①使用した求人媒体
【ネット媒体】
・ジョブメドレー
・ハローワーク
・インディード
【紙媒体】
・地域新聞
このうち大きな成果が得られたのがジョブメドレーです。やはり応募者に直接的にスカウトが送れるのは強いです。
適切な求人内容を作成し、写真等も充実させることでより多くの応募者を獲得するこができます。この業界の求人と言えば独占的にジョブメドレーとなります。
またインディードやハローワーク、そして地域新聞も1件ずつではありますが、応募がありそして採用に至っています。
応募数は多くないですが、今回で言うならば1件中1件が採用になったので”たまたま”採用率100%となりました。
応募が少ない地域において、その他の媒体から1件ずつでも応募があれば御の字です。
最終的には採用に繋がればいいのですから、1件でも増えればいいのです。
ひとつの媒体に偏らず様々な媒体を活用することで、組織ごとの採用活動の特徴を見つけられることができます。
②改善ポイント
不動産会社Aでは、そもそも紹介業者しか利用していませんでした。
そのため、採用コストが高くなり組織基盤も弱かったことで、離職も多く、かけた費用がすべて無駄になっている現状でした。
なぜか、ジョブメドレーや無料媒体を活用する等の発想がなく、永遠と紹介業者に頼っていたのはもったいないですよね。
そこで、ジョブメドレーを導入し、さらにはインディードやハローワークも登録するこおとで応募の絶対数を増やす取り組みを行ったのが改善点です。
自走できるようにスカウト方法、スカウト文の作成ポイント、応募者への返信方法、その後の対応方法について丁寧にお伝えいたしました。
ジョブメドレーの運用は施設長兼取締役に担ってもらい、その他媒体の運用管理、そして全体の採用管理は私たちコンサルタントが担当しました。
7.職員紹介制度の推進
不動産会社Aの強みは、過去に多くの職員からの初回で新しいスタッフが入社していた実績があります。
ここで、今回取り組んだのは「職員紹介制度の推進」です。
以前、期間限定であった制度を改めて見直し全職員へ周知し、採用人数を増やすことがもk的です。
私たちがまず着手したのは「制度の可視化」と「徹底した周知」です。
周知するために作成したチラシがこちらです。

職員紹介制度ので重要なポイントは「周知の徹底」です。
どのようにして紹介すればいいか?
職員は分からないため、対象者がいても声をかけられずにいます。
そのため、一人ひとりの職員に友人・知人に声をかけてほしいと紹介制度の内容を正しく理解してもらい、チラシを渡して周知するのです。
重要ポイントは一人一人に丁寧に説明して協力を仰ぐことです。
しかし、職員紹介制度も実質的には失敗に終わってしまいました。
失敗というのは職員紹介制度を周知する行動に至らなかった・・・ということです。
周知することの重要性を伝え、度重なる採用会議でも一人一人の職員に対して説明しているか確認しましたが、現場が忙しいすぎるということで継続的なアプローチができなかったのです。
職員紹介制度というのは、どれだけ職員が自職場に対して好印象を持っているか、そして良い職場だから知人・友人・家族を誘いたいと思うか。
ここが非常に重要なポイントなのですが、今、現実的には不動産会社Aが運営するサービス付き高齢者向け住宅の3棟は、1棟だけは施設長とサービス提供責任者の努力もあり、離職は少ないですが、他の2棟は厳しい状況です。
ですが、それでも今のうちに紹介制度を整備するのは重要です。
人材採用のチャンスは常に転がっています。
8.会議の見直し
次に会議の見直しです。
ここで言う会議は「採用会議」ではありません。この会議は施設全体の経営や運営について話し合う「全体会議」のことを指します。
全体会議は、副社長発足の元開かれ、ようやく1年が経とうとしています。
しかし、会議内容、開催方法、参加者の意見を踏まえると、適切な会議運営とは言い難いのが事実です。
というのも、会議は基本的に時間が決まっておらず、また題材も決まっていません。とりあえず集まり何か話す程度のものをダラダラと続けているという感じです。
まずは集まることから始めよう!というのは非常に良いことで、会議を開催するという習慣から入り、そして中身を見直してくのは方法論としては問題ないです。
私も、コミュニケーションが不足している組織に対しては、お菓子を食べるだけでもいいからとにかく集まる!ことを習慣としてもらうことはあります。
しかし全体会議を始めてから1年が経ち、永遠と同じ手法で開催しているのは非常に問題です。
では実際の会議運営について見ていきましょう。
会議運営の方法は以下のとおりです。
・全員がオンライン参加(LINEビデオ通話)
・議題なし、内容なし
・ファシリテートなし
・時間設定なし
・目的なし
ここでの問題は、組織内のコミュニケーションが取れていない状態で全員がオンラインで会議を開催していることです。
本来、オンラインで会議を行う時は・・・
①議題が決まっている
②コンセンサスが取れている
③一定の関係性が築けている
この3つが欠かせません。
議題も決まっておらず、関係性が悪い中でのオンライン会議は非常に問題なのです。
もう一つの問題は、副社長のファシリテート力です。
会議の進行は非常に重要です。
会議には常に目的があり、目的に向かって信仰しなければ有意義な時間とは言えません。そのためファシリテーターは常に会議の目的に向かって、進行しなければなりません。
しかし、今回の会議は突貫工事といいますか、、時間も内容もルールも定まっていない中で参加者が自由に主観的な発言をするため、脱線しながら迂回してしまい終わりのない会議となりました。
私たちから提案した会議の進行内容はこちらです。

提案はしましたが、結局導入に至らず、会議の見直しもされなかったことで虚しく終わってしまいました。
コンサルタントとしては、この組織構造的な改革をしなければ、いかに人材採用支援を行っても無駄になってしまうのが想像つくため、なんとかしたかったですが・・・
しかし、これはお客様が期待している支援内容ではないため「やるべきこと」と「やりたいこと」のズレが生じてしまったのです。
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Vol.4 最後に
さて、今回は不動産会社が運営するサービス付高齢者向け住宅の支援について解説しました。結果的には契約通り、6ヵ月間の支援となりましたがお客様の満足度を聞くと、とても低かったため、これはどんなに成果が出ても失敗だったと言えます。
また最も大きな失敗については、幹部含めた職員との関係性を築くことができなかったことです。
採用代行支援については、過去6ヵ月と比較して成果が出たのは事実ですが、施設長兼取締役である幹部職員の方からは、事実ではないデマを経営者に流されてしまったこともありました。
それは私たちが運用管理している求人媒体の取り組みについて、あたかも自分がやったというように言われ、そしてコンサルタントが入っても無意味だと言われてしまったことです。
私たちは成果を成果として威張ることはしませんし、出た成果はお客様の協力と伴走体制があったからこそだと考えています。
このように職員からも嫌われ、最終的に職員が嫌っているから契約更新ができないという事実を作ってしまったのは、まだまだ3流コンサルタントという証拠ですね。
今回の支援はちょうど新型コロナウイルスが蔓延した時期だったことを書いていて思い出しました。
また、支援を振り返るとまだまだ出来ることはあったのではないかと反省してしまいます。
過去を振り返るというのはいいことですね。自分の未熟さを実感できます。
振り返ることで、これから支援させていただくお客様に対して同じことを繰り返さず、期待を超える成果を生み出せるよう強い意識を持つことができました。
様々な経営課題に触れることで、医療・介護・福祉経営コンサルタントとして一歩ずつ成長していることを実感しています。
不動産会社Aと施設で働く皆様には本当に感謝しています。
ありがとうございました。
【お問い合わせ】
FukushiVisionGroup株式会社
医療・介護・福祉経営コンサルティング
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人材教育・育成研修/人事評価制度の構築
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